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「……これは?」
「クラス代表になれたから、お祝いのプレゼント。開けてみて?」
「ふぅん。どうも」
ヴァンは不満そうに唇を突き出しながらも、小包の包装を破いた。
「あ――」
出てきたのは、青いエプロンだった。お腹のポケットのところには、可愛い花のアップリケが縫い付けられている。
「主夫になりたいのなら、お料理とか好きなんでしょ? だったら、いるかなぁって思って」
リーゼロッテは照れくさそうに微笑んだ。ほんのり赤い頬を指でかいている。
「このエプロン……リーゼの手作り?」
曲がった縫い目。ポケットの中心からずれて、やや左に寄っているアップリケ。
そして――絆創膏だらけのリーゼロッテの指を見れば、簡単に予想はつく。
ヴァンのために、わざわざ作ってくれたのだろうか。
甲斐甲斐しい彼女を見て、ヴァンはおもわず、
「可愛いところあるじゃんかよ……」
つい、本心を口にしてしまった。
「あ、いや違うんでごさいますよ? ナンパとかじゃねーですよ? べつに下心とか、そういう気持ちで言ったんじゃないざますよ? だから殴る蹴るの暴行はよせ、パンツロッテさん!」
照れ隠しをしつつ、リーゼロッテを牽制した。最後の一言がなければ、リーゼロッテも殴る蹴るの暴行はしないだろうに。
リーゼロッテは怒るかと思いきや、ヴァンの弁解など、そもそも耳に入っていなかった。
「か、可愛い?」
ヴァンに聞き返すリーゼロッテ。その緋色の目はきらきらと輝いている。
見つめられたヴァンは焦っていた。やばい、どうにか誤魔化さなければ。
「あー、リーゼ。だから、それはあれだ。なんというか、その――」
「よかったぁぁ! 苦労して縫ったエプロン、褒められたぁぁぁ!」
リーゼロッテは歓喜し、その場でぴょんぴょん飛び跳ねる。
……どうやら、ヴァンがエプロンを可愛いと言ってくれたと勘違いしているようだった。
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