第五章 紛れ込んだ宝石<ファリダット>

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 彼女は研究対象を『オモチャ』と称す。オモチャを解剖し、未知を既知に変え、己の知的好奇心を満たす研究者だ。  自称マッドサイエンティストだけあって、ディーの頭はイカレている。オモチャの腹を裂くことに、なんの躊躇いもない。それどころか、嬉々として解剖するらしい。知的欲求を満たすことでしか、生存理由を見出せないような異常者だ。もはや人の心など持ち合わせていない、人の道を踏み外したマッドサイエンティストなのだろう。  一時期、ディーは悪魔召喚の魅力に憑りつかれていた。古文書を読みあさり、毎日夜遅くまで研究に明け暮れていた。  その執念が実り、下級悪魔であるアーリマンの召喚に成功する。  アーリマンとは、空を飛ぶ一つ目の悪魔のことだ。。見た目は少々不気味だが、ただの悪戯好きな悪魔で、人に直接攻撃をしてくることはまずない。  この世での目撃例は、基本的に高所が多い。アーリマンは高いところにいる人間を驚かすという謎の慣習があるのだ。  ディーはアーリマンをペット感覚で飼い始めるが、アーリマンは一か月も経たないうちに死亡した。死因は定かではないが、おそらく悪魔の生息する本来の場所と、現世のマナが異なるためだと推測される。  ディーが悪魔を召喚した……この噂は国王の耳に届いた。
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