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悪魔召喚が可能な研究者を放っておくわけにはいかない。もしも悪魔を操るディーに反乱を起こされたら、国は多大な被害を受けるだろう。王にとって、ディーの研究成果は脅威だった。
王はすぐに対策を講じた。ディーは悪魔召喚の罪で国から指名手配を受けたのだ。
軍が彼女の研究室を突き止めて押しかけるも、そこはすでにもぬけの殻。処刑される前に、ディーは逃亡したのだ。現在に至るまで、ディーの目撃情報はない。
当時、軍の将官だったエマ=クロウリーは、ディーの捜索を早々に打ち切った。その一か月後にエマは、
「私、急に学園を建てたくなったんで、軍辞めます! ちゃお!」
そんなワガママを言い残し、軍を去ったのだった。なるほど。噂どおり、エマはかなりの自由人のようだ。
資料を読み終えた声の主は、すべてを悟ったような表情だった。
声の主はこう考えた。
――エマはディーを見つけられなかったのではなく、かくまったのではないか?
そう睨んでファウスト学園に侵入したのだが、結局は手がかりを掴めないまま今日に至る。
しかし、声の主はヴァンの存在を知り、疑問は確信へと変貌した。
宝石(ファリダット)の一員がエマの夫を殺したとき、ヴァンにも魔術を放ち、半殺しにしたと聞いている。
あのままでは、どんな術を施しても確実に死んでいたはず。だが、ヴァンは生きていた。
何故か。
「簡単な話……♪」
医療でも魔術でも回復不能なら、呪術しかあるまい。
噂どおり、ヴァンは呪術師になっているのだろう。そして呪術師になるためには、ディーのように装置を体内に埋め込む必要がある。ディーがヴァンの体に施術したとしか考えられない。
しかも、ヴァンはエマの一人息子……ピースは揃っている。
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