第五章 紛れ込んだ宝石<ファリダット>

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 ◆  熱のこもった部屋で、男女の声がする。  男は上半身裸だった。ベッドの上で横になっている。  女は興奮しているのか、頬を上気させて男を見下ろしていた。  女の荒い息づかいが、静かな部屋ではよく聞き取れる。 「は、はぁっ、はぁっ……ぁん! ひぃー、ふぅー……」 「何興奮してるんだよ……」 「はぁはぁ……ねぇ。早くシよう?」 「いつもあんたは急ぎすぎなんだ。こういうときは、もう少し頭を冷やしてからだな……」 「意地悪しないでよ……私、我慢できない……っ! 早くシたいのぉ!」 「お、落ち着け! でないと俺が死ぬ!」 「お願い、ヴァン……早くキミの呪術炉を弄らせるんだぁぁぁ!」 「毎度そのテンション怖いんだよ! ちょっと待てディー、おま――ひぃぃぃぃ!」  ヴァンの叫び声など耳に入っていないのか、ディーはヴァンの腹部にある呪術炉と、体内に埋め込まれた呪術回路のメンテナンスを開始した。  ディーは恍惚の表情を浮かべ、呪術炉にオドを注入している。 「私のオド、ヴァンの呪術回路に入っちゃったねぇ。あはっ」 「あの、中でうねうね蠢いていて、すごく気持ち悪いんだけど……」 「そんな憂鬱そうな顔されたら、テンションMAXの私が、ヴァンの体をめちゃくちゃにしちゃうかもよ?」 「う、嘘です! 全然気持ち悪くない! むしろ気持ちいいくらいです!」 「本当? 嬉しいなぁ。嬉しすぎて、破壊衝動が込み上げてきちゃう……はぁはぁ……ぁっ!」  ディーは体をくねらせて、嬌声を漏らす。  いつか命の恩人であるディーに、命を奪われるのではないか……縁起でもないことを考えながら、ヴァンは真っ青な顔をしてメンテナンスを受けている。  ここはディーが幽閉されている地下研究室。  今日はヴァンに埋め込まれた呪術回路の定期メンテナンスの日だ。
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