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「アリアは学年二位の魔術師なんでしょ? そんな魔術師に勝つなんてすごいよ、ヴァン!」
「魔術は母さんに、呪術はディーに鍛えられたからな。勝てたのは二人のおかげだ」
ヴァンは「そうさ! 優秀なあんたらのおかげで、クラス代表なんかになっちまったんだよ!」と内心で毒づいた。
「そんなことない。努力したから、キミは強いんだ。ヴァンはすごい!」
「な、なんだ? 今日はやけに褒めてくるな」
「くふふっ! 前に言ったろ? 私はキミが活躍すると、とても嬉しいんだ。ちょっとくらい褒めさせておくれよ」
ディーはヴァンの頭をぽんぽん叩き、幸せそうに頬を緩めた。もういい歳なのに、まるで子どもの笑顔である。
「どう? クラス代表同士で顔合わせとかあった?」
「あったよ」
「そうか! なら、話を聞かせておくれよ!」
ディーは目を輝かせてヴァンに問い詰める。
指名手配中のディーは、ここから一歩も出られない。ここに訪れるのもエマとディーの二人だけ。ヴァンの学園生活の話を聞くのは、ディーのちょっとした楽しみだった。
ディーだって外に出たいだろうに……ヴァンは少し悲しい気持ちになる。
外の世界に出られないのなら、せめて自分が外の世界を教えてやろう。ヴァンはそう思った。
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