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「なんだ? おつかいくらいなら頼まれてやるぞ?」
「いや、そういうのじゃなくてね。もっと重要な話なんだよ」
ディーは首を横に振ってそう言った。
思わせぶりなディーの態度のせいか、ヴァンの表情も険しくなる。
「何かあったのか?」
「例の犯罪魔術師集団……宝石(ファリダット)がこの学園に紛れ込んだ話、聞いてない?」
「宝石……だと!?」
帰りかけたヴァンだったが、ディーに詰め寄り、彼女の両肩を掴んだ。その剣幕に気圧されたディーは後ずさりする。
「ヤツらはまだ学園にいるのか!? 母さんは何やってんだ! まさか野放しにしてるわけじゃねぇよなぁ!? というか、あいつらの目的はいったいなんだ? いや、それより――」
「い、痛いよ、ヴァン。手を離して?」
「あっ! わ、悪い。つい熱くなっちまった……」
ヴァンは肩を掴む手を離して、申し訳なさそうに縮こまる。
ディーは笑って、「普段は生気のないヴァンらしくないね。少し落ち着こう?」とヴァンの頭をぽんぽん叩く。
ヴァンはヒドい言い草だと思ったが、言い返したりはしなかった。ディーなりに、自分をクールダウンさせようとしてくれているのはわかったから。
落ち着こう。冷静さを失っているようでは、また大切な人が死ぬかもしれない。
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