第一章 やる気なし魔術師の入学初日

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 ある日、少年の母親は、少年に魔術学園への進学を薦めた。息子の魔術の才覚を見抜いてのことである。  対して少年は「やだやだ! 魔術学園になんて行かない! 絶対に俺は入学テストなんて受けないからな!」と母親に駄々をこね、猛抗議した。まるで子どもである。  教育ママと巷で評判の母親は、息子のワガママを許さなかった。 「ヴァン! 言うことを聞いて、大人しく魔術学園に入学しなさい!」  母親は息子のヴァンを叱りつけるが、彼は首を振って反論する。 「嫌だね。どうして今さら魔術の勉強しなきゃいけないんだよ。魔術の訓練なら、死ぬほどやったぜ?」 「そうは言うけど、魔術くらいしかヴァンには取り得がないでしょう。長所を伸ばすのはいいことじゃない。だいたい、あなたから魔術を取ったら、ただのクズよ? 取らなくてもクズだけど」 「俺のメンタル殺す気か! あのさぁ、息子をクズ扱いしないでくれる?」 「あら、私としたことが……ごめんなさい。ヴァンにも長所くらいあったわね」 「だろ? 魔術以外にも、俺の長所はいくらでもある――」 「ヴァンは美白だものね」 「想定外の長所きちゃったよ! それ女子しか喜ばねぇから!」 「あと、うなじが妙に色っぽい」 「だから女子かって! つーか、さっきから雑! 思いつきで褒めるのやめろよ!」 「とにかく! あなたは王立ファウスト魔術学園に入学試験を受けるの! 決定事項なの!」 「嫌だって言ってんだろ! 俺は将来主夫になるからいいんだよ! お嫁さんに養ってもらうんだ! 俺の磨き上げられた家事スキル、母さんも知っているだろ?」 「たしかに料理は上手いし、掃除洗濯その他の家事も卒なくこなすけれど駄目よ! ヴァンはマザコンでしょう? マザコンはマザコンらしく、母親の言うことを聞きなさい!」 「マザコンじゃねぇ! 勝手に変な属性を付け足すな!」
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