第一章 やる気なし魔術師の入学初日

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「まぁ、強情なマザコンだこと! 言うことを聞かないと……『逆巻く烈風よ、閃光を走らせ、震える空を裂き――』」 「うぉぉぉい! 自宅で上級魔術使おうとすんな! 我が家が木端微塵になるわ!」 「『大地を穿ち――』」 「え、ちょマジなの!? わ、わかった、わかったから! このヴァントネール=クロウリー、喜んで入学試験を受けさせていただきます! だから詠唱をやめてくださいお願いします!」 「ほう……? クズのあなたが、簡単に名門校に進学できるとでも?」 「めんどくせぇなぁもぉー! 母さんが進学しろって言ったんだよなぁ!?」 「私が言いたいのは、ちゃんと勉強しなさいってこと。とりあえず、家庭教師を雇います」 「え……ほ、本当に?」 「本当です。ふふふ……今日から楽しい受験戦争の始まりよ!」  こうしてマザコン、もとい少年ヴァンの受験勉強は始まった。  まったくやる気のなかったヴァンだが、必死に勉強した。もし受験に失敗したら、無一文で家を追い出すと脅されたからだ。ヴァンの母親は行き過ぎたスパルタ教育で有名なのである。もっとも、無気力でやる気のないヴァンには、厳しいくらいがちょうどいいのかもしれない。  雇った家庭教師は非常に優秀だったが、ヴァン自身も頭はいい。彼は水を吸うスポンジのごとく、どんどん知識を吸収していった。  そして王立ファウスト魔術学園の入学試験を受け、見事合格したのだった。
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