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その内の一本が、リーゼロッテの頭めがけて飛んでいく。
リーゼロッテが失敗したことに気づいたときにはもう遅かった。彼女の血の気が一気に引いた、そのとき。
「危ない、リーゼ!」
ヴァンは内ポケットから紙切れを取り出し、マナを過剰に吸った草に向かって投げつけた。紙切れは空気に融けて消えていく。
わずかに遅れてかまいたちが生じる。真空の刃は容易く草を切り裂き、リーゼロッテは解放された。光の矢はリーゼロッテを捉えることなく、虚空を切って飛んでいく。
一難去って、また一難……リーゼロッテは高所から一気に垂直落下する。
「きゃあああああああ!」
絹を裂くような叫び声を上げながら、リーゼロッテは目をぎゅっと閉じた。
「ちぃっ!」
弾けたようにヴァンが駆けだした。間に合うかどうか、微妙なタイミングだ。
――リーゼロッテが、おしりから地面に落下する!
「きゃっ……あ、あれ? 痛くない?」
目を閉じたまま、疑問を口にするリーゼロッテ。普通なら怪我をしてもおかしくはない。しかし、リーゼロッテは無傷。それどころか、痛みさえ感じていないように見える。
「な、何? 何が起きたの?」
リーゼロッテが考えていると、
「いてて……無事か?」
「ひゃあっ!」
リーゼロッテは慌てて目を開け、状況を確認する。すると、彼女の顔は熟れたトマトのように赤くなった。
「あのさー、リーゼ。無事なら早くどいてくんない?」
ヴァンは大地に寝そべった状態でそう言った。なお、彼の目の前には、リーゼロッテの白くて柔らかそうな太ももがある。リーゼロッテの顔が赤いのはこのことが原因だろう。
そう……ヴァンはリーゼロッテのおしりの下敷きになっていた。
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