第一章 やる気なし魔術師の入学初日

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 その内の一本が、リーゼロッテの頭めがけて飛んでいく。  リーゼロッテが失敗したことに気づいたときにはもう遅かった。彼女の血の気が一気に引いた、そのとき。 「危ない、リーゼ!」  ヴァンは内ポケットから紙切れを取り出し、マナを過剰に吸った草に向かって投げつけた。紙切れは空気に融けて消えていく。  わずかに遅れてかまいたちが生じる。真空の刃は容易く草を切り裂き、リーゼロッテは解放された。光の矢はリーゼロッテを捉えることなく、虚空を切って飛んでいく。  一難去って、また一難……リーゼロッテは高所から一気に垂直落下する。 「きゃあああああああ!」  絹を裂くような叫び声を上げながら、リーゼロッテは目をぎゅっと閉じた。 「ちぃっ!」  弾けたようにヴァンが駆けだした。間に合うかどうか、微妙なタイミングだ。  ――リーゼロッテが、おしりから地面に落下する! 「きゃっ……あ、あれ? 痛くない?」  目を閉じたまま、疑問を口にするリーゼロッテ。普通なら怪我をしてもおかしくはない。しかし、リーゼロッテは無傷。それどころか、痛みさえ感じていないように見える。 「な、何? 何が起きたの?」  リーゼロッテが考えていると、 「いてて……無事か?」 「ひゃあっ!」  リーゼロッテは慌てて目を開け、状況を確認する。すると、彼女の顔は熟れたトマトのように赤くなった。 「あのさー、リーゼ。無事なら早くどいてくんない?」  ヴァンは大地に寝そべった状態でそう言った。なお、彼の目の前には、リーゼロッテの白くて柔らかそうな太ももがある。リーゼロッテの顔が赤いのはこのことが原因だろう。  そう……ヴァンはリーゼロッテのおしりの下敷きになっていた。
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