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『ありがと~ございました~』
『うぉ、さっみーーー』
最寄駅の牛丼屋で飯を食い、会計を済ませ外に出る。
新年ももうとっくに過ぎ、街はバレンタイン一色だが、未婚彼女なし職なし金なしの三十路手前の男には、イベントなんかどーでもいいわけ。
いや、そりゃ、彼女がいたら頑張るし、…たぶん、いたら。
『金、やべーなぁ』
職なしとは言ったけど、全くないわけじゃない。俳優をしている。…とはいえ名前が売れてるわけじゃないから、枠的には自称俳優だろうか。
最近の仕事はもっぱらエキストラだ。エキストラと言っても拘束時間は長いし、不定期だから日雇いのバイトしか出来やしねー。
そんな感じで今日も日雇いの警備バイト。
ブルーの制服に反射ベスト、誘導棒も勿論ある。家からほど近い場所の仕事な為、そのまま飯食って現場に向かう。
そして今日も俺は夜中に1人で工事現場前の整備。こんなとこ誰1人通らない。右を見れば墓地、左を見れば寺、前を向けば都会では珍しい雑木林。
小汚い看板には〝〇〇区指定〇〇〟〇〇はなんて書いてるか読めない。決して伏字ではない。
背後にあるのは取り壊された家の残骸。結構な金持ちの家だったらしいが、まあ、霊感ない俺でもここには家建てないぞ。
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