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2mはありそうな狼男は話しかけるようにずっと吠え続けている。
さっきからずっと舌をチラつかせているのだから、話しかけている内容が意味不明でも勘でわかる。
一歩、また一歩俺に近づいてくる。
同じ距離感を保ちつつ下がっていたら、いつの間にか元の倒れていた場所にもどってきていた。
『何なんだよ、こっち来んなよ!』
絶体絶命感がハンパない状況の中、せめてもの抵抗で誘導棒を向けてみる。
一瞬赤く光る誘導棒に興味を示すが、直ぐに払い除けられた。
払い除けられた力が物凄く、輪っかを腕に通してなければあっという間に誘導棒の姿は消えていただろう。
『グルルルル、』
『ひぃっ』
奴は牙を剥き出しにし、唸り始めた。何だかすごく気が立っているようだ。
なにか、何かないか!!
俺はポケットの中を探るが、出て来たのはあの携帯だけだ。
くそ、くそっ!気が動転している俺は、我武者羅に携帯をやつに向け画面を闇雲に押した。
『ギャウン!』
どうやら携帯のLEDライトが点灯し、目くらましの役目を果たしたようだった。
よっし、行ける!このまま逃げ…
『うわっ』
LEDの光が急に波状になり、周辺に広がり俺を包んできた。あっという間にその光に飲み込まれ、視界を支配された。
気付いた時には、もうここにいた。
『というわけなのです』
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