掛替えのない友

1/2
前へ
/117ページ
次へ

掛替えのない友

高校へ進学して 同じクラスになった由香とは体育祭で親しくなった 足の速かった私と由香はクラス選抜対抗リレーの選手に選ばれ練習をする日々を送ってた 体育祭まであと1週間とせまったとき 私は怪我でリレーに出ることが出来なくなった 真剣に練習してきた皆の気持ちを沈めてしまったことに 落ち込んでいた私を由香が救ってくれた 「怪我、大丈夫? リレーのことは気にしなくていいよ 私が一番獲るから!」 自信に満ちた由香の表情は本当に一番を獲るんだと思わせてくれた 私の気持ちを楽にしてくれた だから気が緩んでいたんだ 由香だってすごく気を落としていただろうに 優しく強い由香の言葉に涙があふれて 差し出された手を嬉しさのあまり握ってしまった 《絶対獲るよ》 由香の心が視えた はっと由香の顔を見上げ急いで手を離した 「ありがとう」 「はは…返事が遅いな」 ニコッと微笑んだ それから由香はいつも傍にいてくれた 私が心細いんじゃないかと思ったのかもしれない 2年になりクラスが離れたけどよく一緒に帰った 「雪今帰り?一緒に帰ろ」 私が振り返ると由香が手を振っていた 私も手を振る その手を由香が掴んだ 《雨だ…傘持ってないや…》 「傘持ってるよ、一緒に入って行く?」 傘を見せる 由香は驚いた顔をして 何も言わなかった 由香の表情にはっとした また気味の悪い子だと思われる… 「外見てたから、傘持ってないみたいだったし」 取り繕ったような笑顔で由香の返事を待った お願い… 何か言って… この沈黙が怖いよ… 「ありがとう。入れてもらう」 少し俯いたままそう言った由香の表情はくもっているように思えた その日の夜、由香からメールがあった 『何か話すことない? 聞いて欲しいこととか?』 ドキッとした 由香は気付いたのかも… どう返事をすればいいのか悩んでいたら またメールが届いた 『言いたくなったら言ってね』 私はそのメールにさえ返信することが出来なかった
/117ページ

最初のコメントを投稿しよう!

71人が本棚に入れています
本棚に追加