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由香が本当に気付いているのか
確信が持てなかった
もし、打ち明けて拒絶されたら
また離れていっちゃったら
耐えられない
だけどこのまま隠していけるの?
全く眠れなかった
由香と顔を合わせるのが怖い…
気まずい…
何て言えばいいの?
メール気付かなくてごめんね?
昨日寝ちゃって…?
何を言ってもわざとらしい
とぼとぼ廊下を歩く
教室の前に由香が立っていた
「昨日メールしたんだよ」
私をじっと見据えたまま凛として話をする
さっき考えていた言い訳なんてふっとんで
頭の中は真っ白
しばらく沈黙が続いた
沈黙を破ったのは
《私の考えていることが当たっていたら…
聞こえてるよね
話を聞かせて…
今日、一緒に帰ろう》
由香の手から伝わる想いは温かく感じられた
話さなきゃいけない
なのに…何も答えることができなかった
由香も言葉を出さず教室を後にした
これ以上由香に隠しておくなんてできない
私は由香の気持ちに応えようと
放課後、由香のもとへ向かった
「今まで黙っていてごめんなさい」
じっと頭を下げた
「気味が悪いでしょ…
できるだけ視ないようにして…
皆と関わらないように距離をおいて…
だけど…だけど…」
涙で言葉が続かない
ギュッと握りしめた手がそっと温かな手で包まれた
《正直びっくりした
だけど、これは雪が望んでもった能力(ちから)じゃないでしょ》
私は静かに頷いた
《雪が必要以上に人と関わらないのはこの能力のせいだったんだね…
わざと距離をおいているんだね…辛いよね…
話してくれてありがとう》
じっと見つめて笑顔を見せてくれた
「…ごめんなさい…」
勝手に視てしまって、本当にごめんなさい…
「雪が手を貸してくれるときは
いつも私が困っているときだった
…謝ることじゃない」
「嫌じゃないの?」
「え…?」
「その…心をのぞかれて…」
由香の顔が怖くて見ることができなくて
俯いたままでいる私の手を握った
《多分、雪は私の困った顔を見たらほっとけなかったんだね
嫌だなんて思わない、そのままでいいんだよ》
初めてだった
私のすべてを受け止めてくれた
私はこの日のことをこの先もずっと忘れない
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