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心友と同僚
あの頃を思い出す
「どんな風に聞こえるの?」
ただとても興味があった
人の心が聞こえる友人を
雪はいつもニコニコしていた…
自分の話はあまりしないけど
私には心を開いてくれていると思っていた
まさかあんなに深い傷を抱えているなんて想像もしていなかった
「会話と変わらないの
だから分からなかった…
聞こえてくる声が言葉なのか…心の声なのか…
幼かった頃は皆も不思議に思っても平気だったんだと思う
でも…小学校の高学年にもなれば違った
手が触れると聞こえてきているんだって解るようになった頃には手遅れで
気味悪く思う子はどんどん増えて
噂も広まって、違うクラスの子や上級生も下級生や近所の人たちも…
皆離れていっちゃった
ずっと独りだった
寂しくて
こんな手がなければ…
私は普通でいられたのに」
涙を滲ませて
声をからせながら
辛い話をしてくれた
「きっと聞きたくないことも聞こえたり
…したんだろうね…」
「感情はどうすることもできないから
傷つくこともあるけど
私もそれは同じで…
嫌だと感じることも
嫌いだと想うことも
どうしてもあるから…」
そう話す雪の表情は大人びて見えて
綺麗だった
「この能力があるから今の雪が居るんだね
誰よりも敏感で
誰よりも優しくて
誰よりも思いやりがあって
誰よりも強い」
雪が大好き
照れくさくて直接言えなかったけど
《大好きだよ》
ゆっくりと手を取った
雪の手は少し震えていた
ぽろぽろと涙が
取り合った手にこぼれ落ちた
心が視えるから特別なんじゃない
雪だから傍に居たいと思った
だって、雪は本当にキレイだから
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