新たな出会い

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大野が息を整えて、口を開いた 「久保田と由香ちゃんいい感じだな」 「そうだね 今日も一緒に課題やってたよ」 …沈黙… 話って何だろう… 何だか大野の様子がいつもと違って 嫌な予感がした この場から走り去りたいような… 会話が続かない… この沈黙が怖い… 「雪…」 「あれ? 2人とも課題?」 小さく呼ばれた声をかき消して 沈黙を破ったのは久保田くんと由香だった 由香は私の顔色を見て急いで傍に駆け寄った 《どうしたの? 大丈夫?》 何も答えない私を見て 「ちょっと飲み物買ってくる」 私の手を取ってその場を出た 「何があったの?」 「大野から話があるって… 告白されるのかと思って… はは…自意識過剰 何も話さないから緊張して 怖くなっちゃって…」 「そっか… やっと伝える気になったんだね」 「えっ…?」 「気付かなかった? 大野はずっと雪を見てたよ 多分、出会った頃から…」 そんな…全然気付かなかった 私を好きだと想ってくれる人がいるなんて 「とりあえず戻ろうか どうするかは後で考えよう 私も一緒に考えるから」 由香の言葉は温かくて嬉しかった 自分の恋愛話もしたいだろうに 私のことばかり考えて… 「ごめんね、お待たせ」 何も無かったかのように席に着いた 飲み物を飲み干す頃には日もかげり そろそろ帰ろうかとなった 「じゃあ、またね」 駅に向かって歩いていこうとした私の手を大野が掴んだ 《待って、帰らないで》 驚いてバっと手を振り払った とっさに聞いてはいけないとそう思った ショックを受けた大野の顏が未だに頭に浮かぶ 「ごめんなさい…」 「いや、俺の方こそ…ごめん、手痛かった?」 私は俯いたまま頭を振った これ以上この場に居られない… 心配そうな由香を残して足早にその場を後にした すごく傷つけた… 何も知らない大野の気持ちを傷つけた… 知られたくないって 自分が傷つくのが怖いから 知られたくないなんて私のエゴ それでも、どうすることも出来なくて 大野とは挨拶さえ交わすことができない ただのクラスメイトになった…
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