第一部:動き出す運命

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「蒼井、昼行っていいぞ」 「はい、この資料終わらせてから行きます」 若くして課長に抜擢された中川課長 人柄も良く頼れる上司 「蒼井さん一緒にご飯行かない?」 「もうちょっとかかりそうなんだけど…」 「手伝うことある?」 「ありがとう …えっと…このコピーをお願いします」 「了解」 新入社員の田中さん 入社2年目の私にできた初めての後輩 …といっても田中さんは大学出だから年は私のひとつ上 人懐っこい性格で爽やかな彼は皆から好かれる 営業担当で気配りもできちゃう所謂モテ男 頼れる上司に後輩に 恵まれた職場 何の問題もない だからこそ今を壊したくなかった… 「今から昼?」 営業1課デザイン担当の高森 芸大出身で明るくコミュニケーションに長けていて 皆から慕われている 同じデザイン担当で唯一の同期 「うん」 「高森さんは?」 「俺も今から、一緒にどう?」 この3人で食事をするのは時々ある だけど… 田中さんの表情が少しくもったように思えた… 踏み込んじゃいけない… 解りすぎるのは怖いから だから…気付かないふりをした… 一番良い距離感を私は知ってる… それでも…距離をおくことが寂しいと感じる… 踏み込めばこの空虚な気持ちは消えるんだろうか? また同じ想いをするのなら …一層このままで… 変われるなんて 期待してはいけないんだ…
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