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儚い想い
『今日空いてる?
話したいことがあるんだ』
勇気を出して送ったメール
ずっと胸に秘めていた想いを今日こそ伝えよう
入学して1年以上も過ぎてようやく決心がついた
雪に早く会いたくて走った
「雪 待たせてごめん…」
「今来たところだよ」
顏を見ると決心が鈍る
今までもそうだった
伝えたいのに言葉にならない
今の関係が壊れるのは怖い
だけど…伝えなきゃ始まらない
何から話したらいいのか…
「久保田と由香ちゃんいい感じだよな」
…って俺のバカ
そんなこと言いたいんじゃないのに
「そうだね
今日も一緒に課題やってたよ」
笑顔の雪
可愛い
いつもニコニコしてて
口数の少ないところも
デッサンに向かう姿も
優しく答えてくれるところも
全部好きだ
好きだって言えばいいんだ
よしっ!
「雪…」
「あれ?
2人で何やってんの?」
目線を上げると久保田と由香
おいおいおいおい…
何でこのタイミングで…
「ちょっと飲み物買ってくる」
由香が雪を連れて行ってしまった
「ごめん、邪魔したか?」
「いや…
お前たちは?」
「課題は順調
由香にはまだ返事貰えてないけど…」
「そっか…
俺はちゃんと言えんのかな…」
小さくつぶやいた
「ごめんね、お待たせ」
雪と由香が戻ってきた
結局、課題の話や就活の話でお開きになった
「じゃあ、またね」
雪が帰ろうとした
このまま
また先に延ばしていいのか
決心したのに…
気が付いたら雪の手を掴んでいた
その瞬間勢いよく振り払われた手が
衝撃と共に自分の元へ返ってきた
「ごめんなさい…」
ショックのあまり
「いや、俺の方こそ…ごめん、手痛かった?」
ただこれしか言えずに…
逃げるように去った雪の後ろ姿を呆然と眺めることしかできなかった
そのからも気持ちだけでも伝えようと
雪の姿を目で追いかけるけど
あの日振り払われた手と辛そうな雪の顏が思い出されてどうすることも出来なかった
玉砕覚悟の告白に何の意味があるのか
伝えるだけでいいなんて
そんなこと思えるわけがない
このままこの気持ちも終わってしまうのかな
好きな気持ちは膨らむのに
距離は縮まらない
むしろ…どんどん遠くなっていく
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