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絡まる意識
17時 パソコン画面に
『上がれそう?』
高森からの社内メール
「課長、何かお手伝いすることはありますか?」
「いや、今日は上がっていいよ」
「あっ…蒼井、明日から田中に担当持たせるからサポート頼むな」
さらりと課長の気遣い
「はい、かしこまりました
お先に失礼します」
課長のデスクを後にして自分の席に戻る
『上がれます』と高森へメール
「お先に失礼します」
オフィスを出ようとしたとき
田中さんと目が合った
「蒼井さん、お疲れさま」
「…お疲れさま…」
「蒼井、行こうか」
パーテーション越しに高森が顔を覗かせた
オフィスを出て予約したというお店に向かう
元気のない田中さんを残して…
これで良かったのかな…
高森の様子もいつもと違う…
何だか上の空で昼間も不機嫌だった…
ずっと黙ったままだし…こっちまで緊張する…
「どうしたの…?」
「いや…なんでもない」
俯いた高森の顔を下から覗く
高森は長身でいつもきっちりとしていて
同期の間では王子様扱い
だけど、私にはちょっと砕けた部分を見せてくれているように思う
店に着くまでだまったままの高森に私はますます緊張して、いつも高森から話しをしてくれているから…
こんなに会話がないのは初めて…
「ここ!」
「あっ!このお店、前から気になってたんだ」
来てみたかったお店を前に私は嬉しくなった
「ここの店、料理も酒も旨いよ」
高森が漸くしゃべり始めた
「まだ他にも美味しい店があるからまた行こうよ」
「うん…また連れてって…」
それっきりまた黙ってしまった
今日の高森は静かで調子が狂う
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