絡まる意識

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「今日、田中さん元気がなかったね…」 「そうか…?」 イライラした表情… 「あのさ…今日は田中の話はなしで…」 高森は俯いて、また黙り込んでしまった… 「ごめん… こんなこと言うつもりじゃなかったんだけど…」 と言ってまた黙り込んだ… 「鈍いの?」 ちょっとにらんで言う 鈍い…? いつも距離を保ってきた… その態度が鈍いって思わせてた? 距離が縮まったら…もしも… こんな私を知ったら… 誰も受け入れてくれない もうあんな想いはイヤ… 「何考えてんの?」 首をかしげて上目使いで私の顔を覗きながら伺う 「鈍い…について考えてた…」 何て言えばいいのか…言葉に詰まった… 「私… 考えていることが分かるみたいで嫌だって …言われてきて… だから距離をおくようになって… 人と上手く関われなくて… だんだんと関わることも怖くなって…」 そう話す私のことを高森はただじっと見つめていた きっと何を話せばいいのか分からないのかと 思っていた 「蒼井は自分の話はしないし、 人のことも必要以上に聞いたりしない… だから、きっと皆壁を感じているだけかも… でも俺はそんな壁をなくしたい…って思ってて 俺としては俺との壁だけでいいんだけどね」 高森がそっと私の頭を撫でた… 胸がギュッと熱くなるのを感じた… そんな自分を悟られないように言葉を続けた… 「…じゃあ、鈍いっていうのは?」 「いや…だからそれは…」 言葉を濁したまま高森はそれ以上何も言わなかった 入社してから仲の良い方だと思う 人と距離をおいてしまう私にも躊躇なく接してくれる きっと高森も付き合い辛いはずなのに… 高森のおかげで他の同期とも仲良くなれた 私はどれぐらい高森を分かっているんだろう 関わることが多くなれば 親しくなれば 触れることもある …でもそれだけは避けたい 私には距離が必要(いる)から…
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