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特別な想い
オフィスから蒼井と田中が一緒に出てくるのが見えた
「今から昼?」
最近よく2人が一緒にいるのを見かける
同じ課だから当たり前か…
「俺も今から、一緒にどう?」
店に入るなり蒼井と田中の会話にイライラする
クライアントのことは俺の方が分かるっつーの!
「そろそろ田中も担当持つんじゃない?余裕あんの?」
思わずトゲのある言い方
蒼井がすぐさまこっちを見た
蒼井の表情が固まるのが分かった
「大丈夫ですよ!まだ担当も少ないですし」
「田中さん担当決まったの?」
「てか、蒼井も後輩の担当先知らないの?」
「…うん…」
「冷たい先輩だな…」
またやってしまった
蒼井を戸惑わせて…
いつもの俺じゃない
調子が狂うんだ…
絶妙なフォローを入れてくる田中にまたイライラする
前はこんなことなかった…
田中が来てから…
どんどん余裕がなくなっていく…
「蒼井さぁ…今日飲みに行かない?」
2人で居ればいつもの自分でいられるんじゃないか
単純にそう思った…
「うん…多分定時には終われると思う。」
「んじゃ、また後で。」
蒼井の肩に触れたその手が妙に熱くなった
自分の手を見て
鼓動が早くなる
…もうこのままなんて嫌だ…
振り返って蒼井を目で追うと田中と話しているのが見えた
何の話をしているのか…気が焦る…
パソコンに向かっても2人の姿が思い浮かんで離れない
早く17時になれ…
17時終業
よしっ!
『上がれそう?』
早く、早く返事来い!
まだかよ…たった5分の時間が長く感じられた
『上がれます』
その文字を見て胸が弾んだ
やばい…気持ちが溢れそうだ…
デスクを立つと蒼井がちょうど出るところだった
意識をしすぎて、店に向かう途中気まずさがハンパない
「どうしたの…?」
「いや…なんでもない」
内心そわそわする…
蒼井は俺のことどう想っているのか
頭の中はそのことばかりで…
田中が蒼井を好きなのはすぐ解るのに
何で蒼井のことは解らないんだ
考えても答えなんて出なくて…
あぁ…何か話さないと
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