嵌る

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絶頂に達した後、ふわりとしたピンク色に包まれた。 胸が高鳴り、自分を抱きしめている相手を深く愛していると思った。 「雪、愛している」と言われ何か暖かいものに包まれているような、ものすごい幸福感で満たされていたから不覚にも「私も、お義父さまを愛しています」そう答えていた。睦言を何度も繰り返しながら気がつくと、父の腕の中にいた。 寝てしまっていたようだ。「起きたのか?」と問われ、急に先程口にした言葉に不安を覚えた。 「でも、私は、貴方の息子さんの嫁です」 「ああ、判っている。でも、僕たち二人はこうなる運命だったんだよ」と言われ違和感とともに混乱を覚えた。 これは貴方が仕掛けてきたことで、私はそれに巻き込まれただけ。 納得できない顔を見て、 「男と女なんて、互いに引き合うもので片方だけの思いでは成立しないはずだ。お前が、誘うからいけないんだよ。」 誘った覚えなど無く、義父が自分の都合のいいように解釈しているように感じた。 続けて義父は、「こんな気持ちになるなんて思わなかった」と抱きしめた。 「仕方ないこととはいえ、息子にはあまり抱かれて欲しくない」 「それは、できません。」雪が答えると 「判っている。自分の勝手だとも。でも雪が別の男に抱かれると思うと嫌なんだ。」 「それは・・・、結婚しているんだし。それに、この結婚を進めたのは貴方です。」 「苦しいんだ。だから辛いんだ。」 子どもみたいだと思った。 「初めから、決めていたんですか?」昔、ぞっとした想いを聞いてみた。 「そこまではっきりと決めていたわけではない。でも、家に来て欲しかった。ただそれだけだ。」十分すぎる下心のように感じた。 「初めから俺の嫁として来てもらえばよかった」こうなってしまってからならいざ知らず、それはあまり現実には起こり得ないことのように頭で思った。 それから1月近くが経過し、夫からも良く抱かれ、義父からはもっと抱かれた。
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