お義父さま

嵌る

こんな拗（こじ）れた関係を一人胸の内に隠すことで、人に動じることが少なくなった。
自分では何も変わったつもりなど無かったのだけれど、会う人ごとに「綺麗になったね。色っぽくなったね。いい所のお嫁さんぽくなってきたね」などと言われた。
着ているものも変わり、化粧も変わったからかもしれない。
でも、義父から、「お前は綺麗だ」と言われ、人に臆する気持が消えたのは事実だった。
女性として必要とされたことで見た目や態度にまで影響が出るなんて変な気持だった。
自分を深く理解し、与えてくれる義父から離れられなくなっていた。
外の人には「急に威張りだした」と陰口を言われぬよう気を張った。

息抜きに地元から遠く離れたショッピングセンターに一人で出かけ、真っ先にドラックストアに向かっていた。そう言えば最近少し熱っぽいことに気がついていたから。
風邪薬を探して、妊娠検査薬の棚に気を取られる。本心は逆かもしれない。
ついでに買ってもおかしくは無いだろう。
風邪薬を飲む前に、検査してみてもおかしくは無いだろう・・・新婚なんだもの。