目に見えて、手に届かないモノ

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最悪だ…この世の終わりだ… ああ、なんて事だ、どうしてこんな事に どれだけ嘆いても、何もかも手遅れだ 住み慣れた街ごと彼女は小さくなってゆく 手を伸ばせば掴めそうなほどに これまで、これほどの絶望があっただろうか いや、あった だが乗り越えてきた、彼女と共に どんな苦難も、どんな苦痛も でも今は? 無理だ、彼女はもう、ここにはいない 置いてきた、置き去りした! 始めからわかっていた事だった わかりきっていた! 彼女を連れていけない事も 周りの奴が反対する事も 最後の時までそばにいてやれない事も! どれだけ嘆いても、何もかも手遅れだ 人っこ一人いない街など、どのみち終わりだ 手を伸ばしてきたのは相方だった これから、絶望に一人で立ち向かう俺に 周りの奴が決して口に出さない禁句を投げかけた 「いつまでウジウジしてるのよ、たかがゲームじゃない」 「うるっさい!ゲームじゃない、俺の嫁だ!」 そもそもお前が余計な事をしなければ この日までにコンプできたのに! …こうして「この日」を境に 街も人も、少しだけ、静かになるでした この二人を除いて…
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