慶長二十年(1615年)五月六日 大坂

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御婆々の読みは正しかった・・・。 それから小半時も立たないうちに、修理太夫(大野治長)の使い番、星野三郎可保が、月菜右近に付き従われて現れ・・・開口一番出陣の要請を申し述べた。 「・・・しかるに、本日の合戦においてお味方の殿を御勤めあった、一ノ瀬勢の御出陣を皆々様方願っておるので御座います。」 あたし達の前で方膝を付き奏上する使い番に、弥太郎が言った。 「おうよ、まだまだわしらには戦う力は残っちょる。 一丁やってやろうじゃないか。」 「しかし・・・参集したかつての家臣、250余、お預かりした武士300余の内、半数以上は本日の戦で傷つき斃れておる・・・。 籠城ならいざ知らず・・・出戦ではどの位戦えるか・・・。」 弥太郎の言葉に朔之助が冷静に言い放った。 「兵(つはもの)は、長門守、又兵衛殿の手勢から500程賜った・・・。 まだまだひと暴れ出来るぞ。」 右近が日に焼けた顔に笑みを浮かべると、続けて言った。 「後は・・・若の気持ちしだいじゃ・・・。」 あたしも含めて、皆が八雲の顔を見た・・・。 八雲は眼を閉じ・・・大きく息を吸うと言った。 「一ノ瀬家の命運はこの一戦にあり! 勝って鎌倉以来続きたる一之瀬家を再興する。 皆・・・私に付いてきてくれるか?」 「応!」 その場に居る一同の者達が応えた・・・。 こうして、一之瀬家主従は最後の大戦に臨んでいったのである。
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