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「…ちゃん…は…」
―緋野先生は何考えてたのか―
「春子ちゃん!!」
「!」
はっとして携帯に向き直る。
「ねえ、春子ちゃん大丈夫?あのさまさかとは思うけど、誰か好きじゃない人とキスしたの?」
冬真お兄ちゃんは今まで聞いたことないほど冷たい声でそう聞いてきた。
「そんな事ないよ、違うの友達が学校の先生にされてて…」
とても自分とは言い出せなかった。何だかここでキスされたと言ってしまうと、その相手を探し出して殺そうとしてしまうほどの威圧感を感じる物言い。顔を見なくても何故か怖い。
「そっか、ならいいや。ごめんね変なこと聞いて」
うって変わって明るいトーンで冬真お兄ちゃんは返事してくれた。
「じゃあもう時間も時間だし、お休み春子ちゃん。素敵な夢を」
「お、おやすみなさい。お兄ちゃん」
おやすみの挨拶を済ませて通話終了ボタンを押す。それと同時にやっぱり緋野先生は誰とでもキスできるんだなと実感した。1つ大きな溜息をつく。
「ファーストキスだったのに…。」
思わず零れた独り言に更に悲しくなる。何かに縋りたくて何も縋れなくて手元にあった抱き枕をぎゅっと抱きしめる。
…―あの人とは金輪際関わらないでおこう。
そう真剣に決意した。
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