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倒れる先生の後ろから見えた人影は私を校門前で待ってくれているはずの人だった。
「な…な…なつき、さ、ぁ…」
助けてもらった喜びと安堵の気持ちが混ざって少し泣きそうになる。
「行くわよ春子!」
先生に掴まれていた手を夏稀さんが引っ張ってくれるのに従って足を出す。その夏稀さんは、先生を殴った衝動で手から離れて床に落ちてしまったカバンをひっつかみ外に向かわせてくれた。
太陽がそっと月と交代を始める中、2人で必死に道を走る。目の前で揺れる黒髪のショートカットを追いかけるが、流石に息が上がってくる。どうしても酸素を多く取り入れようとする為、口で息をしてしまい、喉が乾燥して血が滲むような味がしてくる。
「夏稀さ、あの、もう…無理です」
ゼェゼェ言いながら夏稀さんに訴えかける。文化部で裏方しかしてなかった様な身からすれば、サッカー部の夏稀さんについて行くのには限界がある。
「春子やっぱ無理?」
慌てて足を止めた夏稀さんに勢い余ってぶつかってしまったがそっと抱きとめてくれた。
「あ…ありがとうございます、夏稀さん!」
嬉しくて自然と笑みがこぼれる。夏稀さんはやっぱり素敵な友達だ。
「あ、えっと、えへへ…そんなの当たり前じゃん!」
そう思って顔を見つめると、褐色の肌をちょっとだけ顔を赤らめて笑い返してくれた。
「…?夏稀さん少し顔が赤い…ですか?」
熱でもあるのか、と心配になっておデコに手を添えてみる。
「へっ!?そんな事ないわ、よ!!ゆ、夕焼けのせいよ!気にしないで!!」
首を横に振って全力で否定してくれる。
「それなら大丈夫ですが、無理はなさらないでくださいね」
心配なので一応、釘を刺しておく。
「そ、そうね、ありがとう春子!」
わしゃわしゃっと頭を撫でてくれると、思い出した様にさっきの事はどういう状況なのかと聞いてきた。
取り敢えずどういう状況でああなったのかをザックリ説明してみた。
夏稀さんは話が進むごとに憤怒の表情を露わにしていく。
「アイツ、ホンットにクズの極みね!春子になんてこと…!」
バンっと拳と掌を叩きあわせながら、先生の事をこき下ろす。
「春子、また何かされたらすぐ言ってよね、私が責任持って追い返してやるんだから!」
そう、元気づける様に握りこぶしを見せてくれるので「うん」と曖昧な返事を返した。
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