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実は少しだけ心に引っかかっていた事がある。
夏稀さんにも言い出せなかった事だ。
先生がキスをする前に耳元で小さく呟いた、
『ごめんね、春子ちゃん。』
『赦して』
という言葉が、私の脳裏から離れてくれない。それと同時に疑問が出てくる。
どうして先生は私の名前を知ってるのか。
他の女性には平気でキスをするのに、わたしにキスをするときに謝ったのか。
そして、私の心の奥底で疼くこのなんとも言えない苦しい感情は何なのか。
何もわからないまま、私はそっと誰かに―緋野先生に―初めてを奪われた唇に触れていた。
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