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「ここにいたんだ」
安堵した声に肩を震わした。恐る恐る振り返ると、幼馴染の渉がいた。
背後から差す月光は彼を突き抜け、私を無情に照らす。淡い月明かりに照らし出された彼は、どうしようもないくらいに綺麗で。私は思わず、見惚れた。
「最後に会えて、良かった」
その言葉の意味するところを、私はすぐに導き出した。嫌なことに対する勘は、鋭い上によく当たる。良い加減に覚悟をしなくてはいけなかった。
「そっか、もう会えないんだね」
「いや、また会えるさ」
そう彼が悪戯っぽく笑った瞬間だった。彼が光を放ったかと思うと、徐々に光の粒子がその体から溢れ出した。それらは全て、空へと吸い込まれるように消えていく。
「またな」
「ーー待って、」
しかし、遅かった。彼は思い出したかのようにVサインを残し、弾けるようにして消えた。試合でも良くやってたあのポーズ。
「ーーまたね」
私も一人繰り返し、そう呟いた。
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