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夕方から店の前に座る女の子。
人待ち顔は時間が経つ程に、不安に押し潰されそうになって。
溜め息が二つ。
僕のと、彼女のが重なる。
じきに店仕舞い。
飾りのパペットをお供に扉を開けた。
「やあ、何しているの?」
不恰好に聞けば、困り顔で見上げて口を尖らす。
「色、間違えたから来ないんだ」
視線の先には、夜景の中でも一際映えるシンボルタワー。
鮮やかなローズ。
ハートの箱にはピンクのリボン。
「間違えていないよ」
「嘘」
「今日は特別な日だからね、色が違うんだ」
その時、階段を駆け上がって来る足音がした。
タワーを見、僕をパペットを見た女の子の目には驚きと喜び。
「パパ、パパの好きな色で結んだんだよっ。プレゼント」
待ちきれず、駆け降りて行く。
はしゃぐ声を聞きながら、僕は何故父親がその色を好きなのかが分かって一人微笑んでいた。
跳ねあがったポシェットの裏には彼女の名前。
桃華と。
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