編みぐるみ

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私に新しいお母さんができた。 新しいお母さんは、最初はお母さんの友達だった。 何度かうちに遊びに来たことがあったので、顔は覚えていた。 だけど、密かにうちのお父さんと他所で会っていたみたいで、仲良くなってしまったのだ。 お母さんにバレて、お父さんは逆に怒ってお母さんを追い出してしまった。 お母さんは、お父さんが浮気を止めてくれるものと思っていたけど、そうは行かなかった。 新しいお母さんが、お父さんにお母さんを追い出すように迫ったのだ。 お母さんは、泣く泣く、離婚届に判を押し家を出て行った。 そして、お母さんの友達だったおばさんが、私の新しいお母さんになったのだ。 私は、本当はお母さんについて行きたかったのだけど、お母さんはずっと働いていなかったので、生活をするために職を探さなくてはならず、実家のおじいちゃんもおばあちゃんも亡くなっていたので、私と生活するのは難しかった。 やむなく、私は、お父さんの方に引き取られたのだ。 新しいお母さんは、本当は、お父さんと二人きりで暮らしたかったので、私が邪魔なようだった。 世間体もあり、仕方なくお父さんは私を引き取った。悲しかった。 お母さんは、優しい人だった。いつも、私に綺麗な手作りの服を着せてくれたり、おやつも手作りで作ってくれた。 手芸が好きだったお母さんの作った縫いぐるみや、パッチワークのソファーカバー、刺繍など、全て新しいお母さんによって捨てられた。 貧乏臭いというのだ。私は、お母さんの思い出が全て捨てられるようで悲しかった。 だから、一番のお気に入りの、小さなうさぎの編みぐるみだけは、ランドセルにつけて大切に取っておいたのだ。 ところが、新しいお母さんが、それを目ざとく見つけて、私から取り上げた。 「返して!返してください!」 私は必死に食い下がった。それが気に入らなかったのか、私は頬を思いっきり叩かれた。
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