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「あ」 振り向けば彼がいた。 どうしよう。私が呼び出したのに、彼を前にして声が出なくなる。とにかく、これだけでも渡さないと。 「これ!」 押し付けるようにチョコを手渡した。 「さ、サンキュ」 満更でもなさそうな彼の照れ笑いが嬉しい。 「あ!」 そこで油断したのがいけなかったのか。瞬間、吹き抜けた突風に煽られて、チョコが彼方へと飛んでいく。 彼方の方を見ていると、恥ずかしくなった。 何やってんだろ。チョコ渡そうとしたのに、こんなの……。 「ごめん!さよなら!」 その場から逃げた私。 その罰か。風に盗られたチョコを見つけた。 砕けたチョコ。 ……もう、渡せない。 何やってんだろ私。 ふと振り向くと、彼がいた。 「あ」 「やっと見つけた。チョコ見つかったんだ。……貰うな」 「ダメだよ。割れちゃった」 「いいって。それに、そんなのなくても……」 そのまま、私は彼に抱き寄せられた。 ……馬鹿。
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