第13章 【時の回廊】

9/74
前へ
/270ページ
次へ
「リュード、私が無理矢理連れてきてしまったのが悪かったのです。先にここを出て、安全な場所に隠れていてください」 物静かな声でリーガルが言って、テーブルに置かれていた漆黒の仮面を手に取った。 テーブルにはもうひとつ。おそらくジェイに渡された物だろう、ターコイズブルーの布で作られた仮面が置いてある。 その漆黒の仮面を目元に当てると、リーガルは努めて明るく笑って見せた。 「とりあえずこの仮面を被っていれば、他の招待客に怪しまれる事は無いようですし、私達だけでも大丈夫ですから」 「ついでにパーティーに参加してみるのも悪くないよな。顔は見えないケド、なかなかスタイルが良い女の子達もいたし」 どこまでもブレないジェイがそう言って、リーガルが苦笑した。 「…………分かりました」 何事か考えていた様子の少女は、顔をあげると、リュードの手首を掴んだ。 「彼だけは、私がここから脱出させる手筈を整えます。あなた方は、2度目の零時の鐘がなる前に、この城の扉を潜るのです。 それまでは、私が何とかしましょう」 「2度目の鐘ですか」 リーガルは、ホール正面に置かれていた、巨大な柱時計を思い浮かべた。 あの時計の鐘が2度目の零時を告げる。 今はまだ日付の変わらない夜、おそらく午後9時頃。 普通に考えれば、1日以上の猶予があるということだ。
/270ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加