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「リュード、私が無理矢理連れてきてしまったのが悪かったのです。先にここを出て、安全な場所に隠れていてください」
物静かな声でリーガルが言って、テーブルに置かれていた漆黒の仮面を手に取った。
テーブルにはもうひとつ。おそらくジェイに渡された物だろう、ターコイズブルーの布で作られた仮面が置いてある。
その漆黒の仮面を目元に当てると、リーガルは努めて明るく笑って見せた。
「とりあえずこの仮面を被っていれば、他の招待客に怪しまれる事は無いようですし、私達だけでも大丈夫ですから」
「ついでにパーティーに参加してみるのも悪くないよな。顔は見えないケド、なかなかスタイルが良い女の子達もいたし」
どこまでもブレないジェイがそう言って、リーガルが苦笑した。
「…………分かりました」
何事か考えていた様子の少女は、顔をあげると、リュードの手首を掴んだ。
「彼だけは、私がここから脱出させる手筈を整えます。あなた方は、2度目の零時の鐘がなる前に、この城の扉を潜るのです。
それまでは、私が何とかしましょう」
「2度目の鐘ですか」
リーガルは、ホール正面に置かれていた、巨大な柱時計を思い浮かべた。
あの時計の鐘が2度目の零時を告げる。
今はまだ日付の変わらない夜、おそらく午後9時頃。
普通に考えれば、1日以上の猶予があるということだ。
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