6人が本棚に入れています
本棚に追加
リーガルの予想通り、リュードが担当した通路は主に客室になっていて、調査はすぐに終わった。
客室の他に、階上へと続く階段のようなものは一切見当たらない。
リュードは、突然フェリに攻撃されるといった恐怖に晒されることが無くなってほっと胸を撫で下ろすと、リーガルの言いつけ通り、シダーが担当しているホールの右手前、リュードが担当した通路の左隣にある扉へと赴くことにする。
1度ホールに出ると、そこは相変わらずの賑やかさに包まれていた。
何度か目元に手をやり、きちんと仮面を着けていることを確認して。
リュードは軽く咳払いをすると、招待客の様子に目を向けた。
誰もリュードの存在を気にかける者はいない。
念のため銃剣は肩に掛けているが、恐らく、部屋に置いてきた巨大なリュックを背負っていたとしても、誰も気に留める者はいないだろう。
それで騒がれるようなら、禍々しい樹状の形を成したオーリーンを背負ったリーガルは、既に叩き出されているに違いない。
50、いや、おそらくそれ以上の人々が、手に飲み物や食べ物を持って、楽しそうに談笑している。
「…………いいなぁ」
招待客のひとりが美味しそうなケーキを手にしているのを見て、リュードは唾を飲む。
ここ最近は引っ越し準備やら何やらでばたばたと忙しすぎて、ろくにご飯を食べていなかった事を思い出した。
どこからか運ばれてきた、湯気のたつ肉の塊を見つけて、リュードの腹が催促の声をあげる。
…………ひとくちくらい、いいんじゃないか。
こそこそっと近付いていって、ほんのちょっとだけかじらせて貰おう。
食べると言ってもほんの数分だし、サボるうちには入らないはずだ。
最初のコメントを投稿しよう!