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人の間を縫って、食べ物のある場所へと近付くと、リュードは小皿に取り分けられている肉の皿を手に取った。
香ばしい鹿肉のローストに、甘辛いたれが掛けられた、見るからに美味しそうな料理だ。
誰も自分を見ていないことを確認すると、リュードは素早くその肉を頬張る。
……ふぉっ、う、うまぁ~い!!
思わず浮かんだ涙を袖で拭き、リュードは口一杯に含んだ鹿肉を咀嚼する。
さすが神の祝賀会。
鹿肉であることを忘れさせる甘みと柔らかさ。癖のある匂いさえ風味のひとつとして構成され、更に、添えられた甘辛のたれが、噛むごとに肉の脂身と絡み合って、独特の旨味を引き出している。
柔らかな肉の端々にさくさくとした食感があるのは、恐らくみじん切りにされた玉葱だろう。変則的な歯応えが、歯と舌の上で繰り広げられるワルツのように……
「いやあ、今年は特に盛大ですなぁ!」
「ぐひゃあ!?」
ぼんと肩を叩かれ、リュードは潰された蛙のような声をあげて飛び退いた。
肩を叩いた張本人である、やや小肥りな紳士がそれを見て、傍らにあった、ジュースの入ったグラスを差し出す。
奪い取るように受けとると、リュードは息をつかない勢いで、それを飲み干した。
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