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紳士が革の仮面の間から成り行きを見守る中、リュードはけほけほとむせながら胸をさする。
「あっ、ありがとうございました……」
「いやあ実に旨そうに食べているものだから、つい声を掛けてみたくなってね。邪魔したようで済まなかった」
「いえ。僕の方こそすいませんでした。こんなに美味しいもの食べたの初めてで……」
そこまで言い、リュードはしまったと口をつぐんだ。
これでは、ここへ来るのが初めてだと言っているようなものだ。
しかし、紳士は楽しそうに微笑むと、リュードに別の肉が載った小皿を差し出した。
「そうか、まあ君は若そうだから無理もない。私もパーティーに呼ばれるのは、まだこれで3回目でね。そう多くはないんだ」
「そうなんですか?」
「フェリ様と違って、リサ様はこう言った祝い事が好きではないだろう。ここだけの話、どうやら今回はフェリ様が無理を言って始めたらしくてね。いつパーティーが中断されるか、私はずっとハラハラしているんだよ」
「リサ……様」
リュードは目一杯考えを巡らせた。
話の内容から推測するに、今日のパーティーは“フェリ”ではなく、“リサ”のパーティーだ。
この屋敷に居る、リサという名の神。
しかもその神は、フェリ神よりも力があるらしい。
「あの……僕、フェリ様にお逢いしたいんですが、どこにいらっしゃるかご存じですか?」
「ははは、フェリ様は不在だよ。今はリサ様がいらっしゃるんだから」
問い掛けのような台詞を言って、紳士はさも当然と言わんばかりに笑った。
リュードがジョークでも言ったと思ったらしい。
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