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リュードもつられて笑った後で、「それじゃあ」と、問い掛けの内容を変える。
「リサ様はどこにいるか知ってますか?」
「リサ様ならパーティーの最初に見たろう。零時の時報と共に皆で誕生日おめでとうと声をあげてさ。いやあ、やはりお綺麗だった!」
「そっ、そうでしたよね……いやあ、僕、個人的にお祝いがしたくて、あれからリサ様を探してたんですよ」
「そうか……ううむ、リサ様は気難しいからなあ……」
紳士はリュードを上から下までまじまじと見た後で、首を横に振った。
「君ではまだ無理だな。第一、リサ様が誰かと個人的に会うだなんて、余程の事が無い限り、有り得ない事だよ」
「そうですか……」
リュードは肩を落とすと、手渡された肉を食べ始めた。
相変わらず肉は美味しい。
けれども話を聞くに、フェリは不在、リサは誰とも会わないと言う。
これでは、例え階段らしい場所があったとしても、結界に阻まれて、謁見室へはたどり着けそうにない。
「やあ……それにしても、君は運がいい」
リュードがたらふく肉を食べてしまうと、紳士がホールの端、大時計を見ながら言った。
つられてリュードも時計を見、そこで、ハッと息を飲む。
高さは優に5メートルを越える。
年季のある、その大きな木の振り子時計は、大きささえ除けば、どこにでもある普通の振り子時計だ。
振り子時計は、静かに時を刻んでいる。
針が指し示す時刻は……11時59分。
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