6人が本棚に入れています
本棚に追加
「えっ、もうこんな時間ですか?!」
控え室に入る前、ここの柱時計を確認した時は夜の9時過ぎ。そこから部屋で話をして、廊下を駆けるように調べたから、さほど時間は経っていないと思っていた。
あと1分で、皆が集まる時間だ。
でも、ここ以外に時計が無いからだろう、見渡すホール内には、まだ誰の姿も見えない。
「失礼します!」
「おいおい、どこに行く気だい?」
皆を呼ぶために駆け出そうとしたリュードの肩を、紳士が掴んだ。
「あと1分じゃないか。ここで待っていたらどうだい」
「えっ、でも……」
「ほら、見たまえ」
紳士が柱時計を指差すと同時に、銀色の長針が真上を指した。
ゴオオオーーン……!
長く重い鐘の音がひとつ、ホール中に鳴り響いた。
「「おめでとうございまああす!!」」
ホールにいた誰もが拍手をして、歓声をあげた。
割れんばかりの拍手にぎょっと肩をすくめ、リュードは慌てて辺りを見渡す。
「なっ、何があったんですか……?」
「ははは、見たまえ、リサ様がいらっしゃったよ」
傍らに立つ紳士が、ホールの中央に向かって視線を向けていた。
最初のコメントを投稿しよう!