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日付が変わるまで。
つまり、1日だけ。
誕生日のパーティーなのだから、日付を跨ぐはずはない。
「あれ……?」
脳裏をよぎった違和感に、リュードは首を傾げた。
何か、忘れているような。
大切な……何か。
自分は何かをしようとしていたはずだ。そんな気がするのに、それが一体何なのか、全く思い出すことができない。
「どうしましたか?」
気遣わしげに紳士が言い、リュードは愛想笑いをしてみせる。
「誰かと待ち合わせしてた気がして……でも、どうしても思い出せないんですよねぇ」
「待ち合わせですか。なぁに、もし大事な待ち合わせなら、いずれ向こうから声を掛けてくる事でしょう。心配は不要ですよ」
「そう……ですよね」
気掛かりを心の奥にしまい、リュードはパーティーに専念することにした。
本当に大切な用事なら、時が来れば思い出すに違いない。
それまではここで楽しくやっていよう。
「さあどうぞ。これでも飲んで落ち着いてください」
紳士にグラスを渡され、リュードは一息で飲み干した。
不思議な味のジュースだった。
初めて飲むはずなのに、飲んだことのある味がする。
きっと疲れているんだろう。
明日から仕事なのに、こんな所まで来て…………
…………あれ、どうしてここにいるんだろう。
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