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正直な所、この城の所有者が誰であれ、ジェイがやることはひとつだった。
城に住む「女神」を一目見ること。
イストルランドの彫像があれだけ美人なのだから、本物はきっと、更に美しくて、かつスタイルがいいに違いない。
それに時を自在に操れるのだから、年齢だってきっと若いはずだ。
せっかくのチャンスを、ここで逃すわけにはいかない。
あくまでもそのついでとして、リーガルを含めた他の奴らの警護がある。
ジェイに続いて廊下へと出たリーガルは、ふと、何かに気付いて立ち止まった。
先程までいた、宝物庫の中へと再び目を走らせる。
部屋の左右を武器や宝石等が占めているが、正面はただの壁だ。
「どした?」
先に廊下へと出ていたジェイが、リーガルに気付いて首を傾げる。
「…………いえ、ちょっと……」
部屋の奥までやって来ると、リーガルは、壁の前で立ち止まる。
「……ジェイ、ここへ来るまでの部屋ですが、こんなに明るかったでしたっけ?」
「明かり?」
言われてみれば、と、ジェイは部屋を見渡した。
「食堂も図書室も暗かったな」
「それに、扉も開いていました……まるで、私達をここへ呼ぶかのように」
「考えすぎだろ」
ジェイは言うが、リーガルは宝物庫の壁に触ろうと手を伸ばした。
何の変哲もない、ざらざらした煉瓦の壁だ。
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