第13章 【時の回廊】

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天井の高い、円形の小部屋だった。 窓のない部屋の壁は一面が空の色で塗られ、所々に、雲を模したペンキが白く塗られている。 足元は、カラフルなドット柄のカーペット。 天井には、鳥や雲を象ったモービルが静かに揺れている。 子供部屋。 誰がどう見ても、子供がいると思わせるような部屋だった。 「……あれは」 何かに気付き、リーガルはジェイの肩を叩く。 足元に散らばるウサギやひよこの縫いぐるみを避けながら、2人は部屋の真ん中まで歩み寄った。 そこには、天外のついた、円形の大きなベッドが置かれている。 「貴女は……」 ベッドの中に、誰かが座っていた。 ふわふわしたビロードのベッドの上、そこにいたのは、4、5歳くらいの幼女だった。 銀色の髪の毛はエクートのショートヘアーよりも更に短く、いくらか不機嫌そうに伏せられた瞳は、オレンジがかった月の色。 美少年とも取れるようなその幼児が女の子だと分かるのは、真っ白なレースをふんだんにあしらったドレス型のパジャマを身に付けているからだ。 何の獣とも分からない、垂れた耳と尖った鼻、そしてギザギサの牙を剥き出しにした浅黄色の縫いぐるみを抱き、幼女は怯える様子もなく、リーガル達を見上げている。 「……初めまして、お嬢さん……ええと……」 この屋敷にいるのが、時の女神だけだと考えていたリーガルは、見当違いの住人の登場に言葉を失った。 辛うじて挨拶をするが、そこから先が浮かんでこない。
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