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「頼み……ごと」
何を喋っても、幼女は言葉を反芻するだけだった。
焦り始めたリーガルとは逆に、ジェイは少女の様子に対して、別段感情を変えることもない。
「……所で、キミの名前は?」
不意に語りかけの切り口を変えて、ジェイがそう言った。
少女はしばらく黙り込んだ後で、縫いぐるみを抱く手にぎゅっと力を込める。
「…………リサ」
やがて、少女は上目がちにジェイを見ながら、そう呟いた。
「ふうん、リサか。可愛い名前だな」
ジェイが言うと、少女は頬を染めながら、縫いぐるみに顔を埋めた。
「あれ……?」
幼女の頭を撫でていた手を引き。
ジェイは、伏せられた少女の顔をまじまじと見つめ直した。
「……いや……まさかな」
何かの匂いを感じ取ったのだろう。
ここへ来るまで、ジェイはこの屋敷が持つ奇妙な感覚に困惑していた。
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