古いテレビ

2/2
前へ
/2ページ
次へ
 あれだってテレビには違いないし、何か機械をつければ地デジも映るって父さんは言ってた。  親が買ってくれた…はないだろ。となると、友達の所からでもその機械をもらったんだろうか。  何にしろ、部屋でテレビが見られるのはいいことだよな。  そう思いながら子供部屋の扉を開ける。  そこに弟はいなかった。だけどテレビはつけっぱなしで、画面を見ると…そこに弟が映っていた。 「兄ちゃん、出して!」  弟が叫ぶ。それと同時にテレビは切れた。そして以降は、どうスイッチを弄っても二度とつくことはなかった。  両親が帰った後、俺はこのことを二人に告げた。もちろん最初は信じてもらえなかったけれど、弟は行方不明のままで、ついには俺の言葉を信じてくれた両親は、色んな所から話を聞き、お寺や霊能者の所を片っ端から訪ねて歩いたけれど、弟はいまだに戻っては来ないままだ。  …あれから四十年。祖父母どころか両親も亡くなり、俺は結婚して子供も生まれたけれど、いまだに弟は消息不明のままだ。そして、この話を信じてくれた妻の許可を得て、今もあのブラウン管テレビは俺が自室に保管している。  いつかまたこのテレビがついたら、弟は戻って来るかもしれない。その日が、俺が生きている間に訪れてくれればいいなと思う。 古いテレビ…完
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加