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「『取引先』ですね」
「それは、分かるんです、けど。あの、今の営業担当は神崎さんですよね。今日の事もそうなんですけど、どうして幸先生、乾課長に」
「付き合いが長いから。ではないかと」
「……それは」
「僕がこの会社に来て初めて担当したのが森本先生のクリニックです。途中から赤西さんに変わりましたけど、何か融通して欲しい時は僕に連絡してきて」
「それで」
「ではないでしょうか。いいように使われてるんですよ、僕」
ひと言ずつ先を促す彼女に、冗談を交え、丁寧に答える。
「それだけ……ですか?」
けれど、彼女はまだ納得していないらしい。
「と、言いますと」
「それ以上の関係、ってことはないですか?」
膝の上に置いてあった彼女の両手にきゅっと力が入る。
「『それ以上の関係』?」
「はい」
こういうのを女の勘と言うんだろうか。
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