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「何を言っているんだ?」と訊ねると、少年はいたずらっ子のように笑って言った。
「オジサン、"時間"欲しい?」
迫り来る電車。黄色い線へと人が詰めかける。
この少年の存在に気づいているのは、男だけのようだ。
男は話がよく分かっていないにも関わらず、首を縦に振った。時間があれば、この不思議な状況と この少年について聞けると思ったからだ。
「じゃあ、少しだけ時間をあげるね」
そう少年が言うと、周りの景色が動きを止めた。手をグーパーしたり、足を動かしたり、男自身は自由に動けるらしい。
「え!? な、何がどうなってる? 君は一体……」
「僕は、ティム。"時"の門番だよ。だから、時間は僕が管理してる」
「……"時"の門番?」
「そう。オジサンは、あの時。30秒後に爆発に巻き込まれて死んじゃうところだったんだ」
「爆発だって!? こんな田舎の小さな駅で!?」
ティムは静かに頷くと、悲しい表情をした。
「残念だけど……オジサン以外は、全員助からない」
「時間を動かせるなら、出来事だって変えられるんじゃないか!?」
「……それは僕には出来ないよ。オジサンは特別。依頼書が届いたんだ。……【神様】から」
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