0人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
ティムは1枚の紙切れを取り出し、男に見せた。
「僕らの世界にも、この世界と同じようにルールがあって、自分勝手に時を動かすことは出来ないんだ。"全て"は、神様が管理してるから」
この言葉から男は世界の仕組みを汲み取った。
つまり、この世界の全ては人々の空想だとされてきた【神様】が握っているという事を。
過去・現在・未来……。そして、自分の命までも。
今までの毎日は全て決められていたもので、努力して認められた事も、会社でも家庭での地位も自分で築き上げてきたと思っていたが、それも全部 神様のシナリオ通りだった訳だ。
愛する妻と出会った事も……。彼女と結婚し、二人の子どもに恵まれた事も。先週、家族で初めて海外旅行に行った思い出も……。今に至るまでの何もかもが……。
男は、"全て"に失望した。
「さぁ、どうする? 時間は、もう無いよ」
失意を抱いたまま、神様が作る毎日をただ生きていくか、それとも、ここで人生を終わらせるか……。
「神様も嫌な奴だな」
男は静かに笑った。ティムは、その表情に彼の答えを知り、悲しく微笑んだ。
「……サヨナラ、オジサン。いい結末を……」
時間は、再び動き出した。
あの少年 ティムも、そこにはもういない。
電車がホームへ差し掛かる。
最初のコメントを投稿しよう!