7/7
55人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
 今年の春には未来に胸をふくらませ、東島進駐官養成高校に入学した。それが半年で繰り上げ卒業となり、さらに半年で「須佐乃男」を乗りこなし氾=エウロペの巨大侵攻軍と実戦をおこなわなければならないのだ。  ただの進駐官養成学校の一回生が、135万人を超えるこの星最大の戦力と日乃元の国の存亡をかけた壮大な本土防衛戦を勝ち抜かなければならない。  恐怖と責任、不安と栄光に引き裂かれ、まともになにかを考えることなど到底不可能だった。須佐乃男は軍事史上最大の侵攻軍にも負けぬほどの計り知れない戦闘力を有する。生ける軍神として、日乃元の歴史に輝ける名を刻むか。あるいは戦いに敗れ、16歳ではかなく散るか。半年後には究極の運命が待っている。  誰もが痺(しび)れたように硬直していたとき、ドアを叩く音が鳴った。手で打つような軽い音ではなく、ハンマーでもつかってドアを叩き破ろうとしているようだ。  また氾帝国のスパイのテロだろうか。若き少尉たちが身構えたとき、ダブルドアの両側に立つ作戦部の男がドアを開いた。 「お待たせしました。谷(たに)照貞(てるさだ)少尉、着任しました」  クニが叫んだ。 「テルー、おまえかよ」
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!