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白い世界で
・・・ここはどこだろう
白い白い世界ー
目の前に白いドアと、若い女が立っていた。
ー大丈夫、思いっきり泣きなさいー
若いい女は私に近寄り、その白い柔らかな手で私の頬を撫でる。
なぜだろう、気がつけば涙がこぼれ落ちていた。
涙なんて流しすぎて枯れてしまったと思っていたのに。
ー辛いこと、苦しいこと、たくさんあったんだね。
そして、どれほど悲しいことがあっても、変わらずやってくる明日に疲れちゃったんだねー
女は私の隣に腰を掛けると、私を抱き寄せた。
ー生きていればね、辛いこといっぱい経験するの。
だってそれは生きているから。
でもね。生きているということは辛いことを経験するだけではないの。楽しいこと、幸せなこともいっぱい経験するの。今日はダメな日でも、明日は良い日になるかもしれない。生きていればね。ー
「でも俺の人生では辛いことしかないんだ」
女は私に優しく微笑む。
ー幸せというのは、たくさん転がっているものなのよ、道端のアスファルトに咲いたタンポポの花に目を向けてみて。あなたもきっと勇気をもらえるはずよ。目を開けるのよ。瞼を閉じていては暗闇しか見えないわ。目を開いて、小さな幸せを見つけるためにー
女は私にキスをすると、立ち上がり、白いドアに手をかける。
ーさぁ生きなさい、あなたの世界はまだ始まったばかりよー
あぁ意識が遠退いていく・・・
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