気まぐれ短編集

サヨナラの後は

多分だけど、長野さん一人で居たとしたら、女子がキャーキャー言って、目をつけてたに違いない。

とは思うんだけど、なんと言うか……長野さんは、一緒にいる相手が悪かった様だ。

それも無理ないか。

なんたって、この学校の生徒会長を務めてて、学校一の有名人でもあり、人気者でもある浦川(うらかわ)さんがいつも隣に居たからなぁ……。

外見が(多分、中身も)完璧な浦川さんと並ぶと、隣に居る人の存在感は無いに等しくなる。

それは……あの独特な雰囲気を纏って、綺麗な顔をしてる長野さんでも、例外ではなかった様だ。

けど、それだけじゃない。

長野さんは、近眼でも無いくせに、ダサい眼鏡を掛けてる。

きっとダテだと俺は思ってるけど……。

後、いつも俯きがちだ。

そりゃ、目立つ訳無いって思うよ。

でも、そうやって言えるのは……多分、眼鏡を取ってあの綺麗な顔を正面から見た事がある奴だけなのかもしれない……。

……って、つまりは、俺の事なんだけど。

けど、そう思って一人でドキドキしたり、ワクワクしてたのは最初だけだ。

だって所詮は、俺だけが意識して、長野さんを見てるだけにすぎないって、気付いたから。