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バレンタインデーに、手作りチョコレート。ラッピングも凝って、私自身もおめかしして、大好きなあの人を呼び出した。
髪形おかしくないかな、跳ねてないかな。
「練習。す、好きです……貰ってくだたいぃ……ぁ、噛んだ……」
夜景を前に台詞の練習。
「ごめん、お待たせ」
背中に声をかけられて、私はゆっくりと振り向く。
「いぇ、あの、これ、もらもらもらって……」
「……ふふ、さっき聞いた」
「さ、さっきの噛んだやつをですか?」
優しい笑顔でそう言った彼は、改まったように咳払いをして、言った。
「そのチョコ、俺にください」
私は一度彼から視線を外し、チョコを見つめる。自分の心と気持ちを見つめて、もう一度彼へ振り返った。
「好きです。だからチョコ、半分程返してくだたい……ぁまた噛んだ……」
彼は幸せそうに微笑み、片手でチョキを作った。
「じゃあ、来年からはチョコ二つ作ってきてな」
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