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「くくく、あはは!そうかそうか、そういうことか!」
対して勇者は実に嬉しそうに高笑いをあげていた。
自らがまだ不死であることの理由も推測できた。
恐らくは魔王という存在があの倒した奴からこの小さな幼子に写ったのだろう、もしくは元々本来の魔王はこの幼子だったのだろう。
今頃、人は魔王と勇者を葬ったと思っているであろうが結局は両者ともに生存。用済みにされたが、何も片付いてなかったのだ。
あまりにも滑稽すぎて勇者は笑いが止まらなかった。
しばらくして泣いていた魔王がきょとんとしているのに気づくと勇者は彼を右手で抱き上げ抱えた。
人として生きるために捨てるはずだった不死の力。
新たな目的のためにはまだ必要だ。
他に魔王がいるという確証がない以上、彼の保護は能力の維持のためには必要だった。
「君は僕のものだ。いいね?」
「い、いやだ!」
「拒否権があるとでも?余程死にたいようだね」
魔王が拒否の言葉を口にする途端、勇者は殺意を込め目を細めて睨み付けた。
ついでとばかりに己の身体に押し付け、腕と体で圧迫する。
効果はあったようで魔王は赤面し顔を背けた。
(赤面するほど、己の無力を恥じるくらいはするのか。まぁ暴れるよりはましかな)
勇者は魔王の反応に納得しながらも、階段を登っていった。
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